sanka
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私たちは「かほり」を
五感のみならず、
記憶と時間のすがたとして
見つめています

山の気配、土のにおい、
風が運ぶ季節のうつろい

やがて漂い始める香りが、
ひと皿が始まるその場所に、
静かに満ちていく
素材の記憶、ソースの奥行き、
ワインの余韻……
それぞれが語らうように、
ゆるやかに広がっていく三つの香

自然が育んだ静かな芳しさと
皿に織りなす重なりが
ひとつのゆらぎとなって、
心にそっと触れるように


不易流行————

「不易を知らざれば基立ちがたく、
流行を知らざれば風新たならず」
―― 俳諧の道を極めた松尾芭蕉の言葉です

先人たちが積み重ねてきた技術や想いには、揺るぎない本質(=不易)がある
その確かな土台のうえに、
今という時代の感性(=流行)を
重ねていくことが
私にとっての“表現”の原点です

素材そのものの味わいも、
もちろん美しく

そこにソースという工夫が加わるとき
味わいはさらに奥行きを持ち、
広がりを見せてくれる
伝統と創造の「あわい」で、
一皿を仕上げていきたい
そんな「足し算の妙」を
感じていただけたら

香りの旅————

畑のようすを伝えたい
野菜の仕込みには土も取り入れて
その香りもお皿の上で表現したい

香りをかぎ、深く息を吸う——
私たちは深呼吸をすることで、
心を整えることができます
料理を味わいながら、
思いきり深呼吸してほしいのです

香りは、
私たちの記憶や感情に深く触れ
理屈や形式には収まりきれない
不思議な力を持っています
だからこそ、
私は「香り」という存在に、
もっと目を向けていきたいのです

ワインが導く一皿————

"On prend quoi comme vin aujourd’hui?"
(今日のワインは何にする?)

ニースやアルザス、
ブルゴーニュで働いていた頃
近くのレストランに食事に行くと、
席についた瞬間にソムリエが
そう尋ねてきました

そこにあったのは、
“ワインも楽しむための料理”

料理とワインは同等であり、
ワインと料理が一体になっていたのです

ワインのことを知らなければ、
ここにいるお客様の気持ちを
理解することはできない
それから私はワインを探求しました

「このワインをお客様に飲んでほしい」と思い
そのための料理を考えることもあります